家を売る際の適正価格を知らないと、不当に安く買い叩かれる恐れがあります。
この記事では、不動産査定の種類や査定の流れ、査定価格の算出方法を解説します。記事を読むと、安心して不動産査定を出せるようになるでしょう。
不動産査定にはオンライン査定、訪問査定、一括査定の3種類があります。査定を依頼しても必ず売却する必要はありません。査定の依頼には、物件の情報や書類を準備することが不可欠です。
不動産業に従事して10年、宅地建物取引士である筆者が解説します。
不動産査定とは
不動産査定は、家や土地などの不動産の市場価値を判断します。所有する不動産の適正な市場価値を知るためには、査定を依頼することが重要です。査定では物件の状態や周辺地域の価格、立地条件など要素が評価されます。
不動産査定の種類
不動産査定は下記の方法を選べますが、査定方法や価格の見積もりが異なります。
- オンライン査定
- 訪問査定
- 一括査定サービス
オンライン査定
オンライン査定は、インターネットを使って物件情報を査定に出す方法です。オンライン査定は、室内の細かい状態や周辺環境の詳細を把握できないため、正確さに欠ける場合があります。
物件の所在地や間取り、築年数などの基本情報を入力し、手続きは簡単で結果が早く出ます。不動産会社が無料で提供しています。匿名で査定を行えるサービスもあり、プライバシーを保ちつつ利用が可能です。
オンライン査定は実際の売却価格と異なることが多いので、目安として参考にしてください。
訪問査定
訪問査定は不動産の価値を把握するために、専門家が物件の状態を直接確認する方法です。物件の状態や周辺の状況を考慮するため、正確な査定ができますが、結果が出るまでに約1週間かかります。
査定では内外装の状態や修繕の必要性、周辺環境、アクセス性、日当たりなどが評価されます。過去に行われたリフォームや改築の履歴も査定価格に与える影響が大きいです。査定士と直接対話することで、不明点の質問や相談ができます。
査定には土地や建物の書類、不具合がある場所などの欠点も含めて準備することが重要です。
一括査定サービス
一括査定サービスは、複数の不動産会社に同時に査定依頼を出せる方法です。複数の見積もりを比較することで、物件の市場価格を把握しやすくなり、適正な価格での売却ができます。
地域や物件種別に特化した不動産会社を選べることも、利用者に魅力です。利用は無料で査定を受けても売却する必要はないため、安心して査定を依頼できます。
査定結果は会社ごとに異なるため、結果を比較する際には注意が必要です。
一括査定サイトの選び方や比較基準を下記の記事にまとめています。
不動産査定の流れ
不動産査定は次のような流れで行います。
- 事前準備
- 査定依頼
- 査定結果の受け取り
事前準備
不動産査定を依頼するには、事前準備が重要です。物件の状態を把握し、必要書類を準備すれば、正確な査定結果を得られます。
準備には土地や家の広さ、築年数、外壁や水回りなどの状態の把握が必要です。登記簿謄本や固定資産税評価証明書などの必要書類を準備してください。
準備を行うことで、査定依頼の際にスムーズに進められます。
査定依頼
不動産査定の依頼は、不動産会社や査定サービスに連絡し、物件の情報を提供します。依頼は電話やメールで行い、オンライン査定や一括査定の場合はフォームへの情報入力が必要です。
訪問査定の場合、不動産会社が物件を確認するための日時調整をしてください。査定を依頼した場所からの質問には、早めに対応しましょう。
査定依頼時には、物件の特徴や良い所を積極的にアピールすることが重要です。
査定結果の受け取り
不動産査定を依頼すると、結果は1日〜1週間程度で不動産会社から提供されます。査定結果には物件の価格の詳細な説明が書いてあり、受け取り方法は書面やメールが一般的です。
査定結果には物件の状態や市場価値、周辺環境などが記載されています。売却を進めるかどうかを判断するための重要な材料です。査定価格に納得がいかない場合は、別の不動産会社へ査定を依頼することも可能です。
不動産査定の結果をもとに、慎重に判断することをおすすめします。
» 不動産売却成功への近道!
査定価格の計算方法
不動産査定価格の算出方法には取引事例比較法、原価法、収益還元法があります。
取引事例比較法
不動産の査定において、取引事例比較法はよく使用される手法です。条件が近い不動産の価格を参考にし、査定額を導き出します。
取引事例比較法は、査定対象物件と取引事例との違いを修正係数で調整して、物件の価値を算出します。修正項目には立地条件や物件の規模・状態、権利関係などが含まれます。市場の最新動向を反映しやすいことが特徴です。住宅や土地、店舗などさまざまな不動産に適用できます。
取引事例比較法は、市場データに精通している不動産会社や鑑定士が査定を行うことが一般的です。
原価法と収益還元法
不動産の評価方法に原価法と収益還元法があります。
原価法では、新築で同様の物件を建てた場合の費用を基に経年劣化を考慮し、価値を算出します。土地の価値は別途評価され、最終的に建物と組み合わせて総合的な不動産価値を求める方法です。
収益還元法は、不動産から得られる見込み収益に基づいて価値を計算します。賃貸物件や商業施設などで用いられることが多く、年間収益を見込みの利回りで割って算出する方法です。
物件のタイプや市場状況に応じて、最適な査定方法を選択すれば、正しい不動産価値を把握できます。
不動産査定のよくある質問
不動産査定の費用や有効期限など、よくある質問について解説します。
査定費用はかかる?
不動産査定を依頼する際には、査定費用がかからないことが一般的です。不動産会社は無料で物件の査定サービスを提供しています。
一方、不動産鑑定士に依頼する場合は有料になるので、依頼前に査定費用を必ず確認することが重要です。訪問査定では出張費用がかかることがありますが、多くの会社で無料で行われています。
査定依頼時には明確なコストがかからないことを確認し、安心して査定を受けられるようにしましょう。
査定の有効期限はどれくらい?
査定の有効期限は、通常3か月が目安です。価格が変動する可能性があるため、査定値の信頼性を担保するためです。
市場動向や経済状況の変化、不動産の状態、周辺環境の影響を考慮します。有効期限が切れた場合や市場価格が大きく変動した場合には、新たに査定を依頼できます。
不動産査定を依頼する前に知るべきこと
不動産査定を依頼する前に知るべきことは以下のとおりです。
- 査定価格に影響する要因
- 不動産市場の動向
- 会社ごとの査定額の違い
- 不動産査定に関する法的事項
上記を理解したうえで依頼することで、より自分に最適な査定額を見つけやすくなります。
査定価格に影響する要因
査定価格に影響する要因は多岐にわたります。最も大きな要因は立地条件です。交通アクセスが良い場所や周辺環境が整っている地域は高い評価を受けやすいです。例えば、駅に近く、スーパーや病院などの公共施設が充実している場所は特に評価が高まります。
建物の状態も重要です。築年数が新しい建物はもちろん、構造がしっかりしており、日常的なメンテナンスが行き届いている物件は高く評価されます。例えば、定期的に外壁塗装や屋根の修繕が行われている建物は価格にも反映されます。
土地の広さと形状も査定価格に影響します。広い土地や整形地は利用価値が高いため、査定価格も上がることが多いです。周辺の不動産市場の動向も無視できません。周囲で同じような物件が高値で取引されている場合、地域全体の評価が上がる傾向にあります。
法的規制もチェックポイントです。用途地域や建ぺい率、容積率などの法的な制約が厳しい地域は、査定価格が低くなることがあります。例えば、商業地としての利用が難しい地域では価格が抑えられることが多いです。
建物の設備や内装の状況も影響します。最新のキッチン設備やバスルーム、空調設備が整っている物件は高評価です。日当たりや眺望も良い物件は査定価格が上がることが一般的です。例えば、南向きで眺望が良いマンションは特に高く評価されます。
さまざまな要因を総合的に考慮して、不動産の査定価格が決定します。各要因がどれほどの影響を与えるかを理解することで、より適切な価格設定が可能です。
不動産市場の動向
不動産市場の動向を理解することは、査定価格を正確に見積もるために大切です。市場全体の動きが個々の物件の価値に直接的な影響を与えるからです。特に以下の点を押さえておくと良いでしょう。
- 住宅価格の上昇
- 都市部と地方の価格差
- 低金利政策
上昇傾向が続いている「住宅価格」。都市部と地方での価格差が拡大していることも関連しています。都市部では需要が高まっているのも、価格が上昇傾向である理由の一つです。低金利政策が続いていることも、住宅ローンの借りやすさを助け、購買意欲を高めています。
具体的な例として、新築住宅の供給が減少し、中古住宅の需要が増えています。投資用不動産の需要も高まっており、特に国際的な投資家の参入が増加。特定のエリアでの価格が急上昇することがあります。
現在注目されている、環境に配慮した「グリーン建築」。持続可能な建築物が評価されることで、長期的な価値も高まりやすい傾向にあります。地価が安定している地域と変動が激しい地域があり、違いを理解することも重要です。
コロナ禍の影響でリモートワーク需要が拡大している点も見逃せません。リモートワークが可能な住宅を求める人が増え、市場に新しい需要を生んでいます。不動産テックの進化により、オンライン査定が普及し、査定の手間が減少したことも市場に影響を与えています。
動向を把握することで、不動産市場の現状を的確に理解し、より正確な査定価格を見積もることが可能です。
会社ごとの査定額の違い
査定額は会社ごとに異なることがあります。各社によって、以下の点で差があるからです。
- 査定基準や評価方法
- 会社の実績
- 査定担当者の経験
- 査定システムやツール
- 評価ポリシーやガイドライン
上記は、それぞれの会社が持つ販売戦略や広告方法とも関係しています。例えば、高めの査定をする会社は、積極的な広告戦略を反映した価格設定を行っている場合が多いです。
会社ごとの査定額の違いは複数の要因が組み合わさって生じます。依頼する際は、各社の特徴を理解し、複数の会社から査定を受けるのがおすすめです。
不動産査定に関する法的事項
不動産査定に関する法的事項について理解しておくことは非常に重要です。査定は「宅地建物取引業法」に基づいて行われます。法律では、不動産業者が適正な価格査定を行うことを義務付けています。不動産業者は「不動産鑑定評価基準」に従い、適正な査定を行わなければなりません。
査定結果に納得できない場合、売主には他の業者に依頼する権利があります。より公正な価格を求めるための大切な権利です。査定報告書の内容も明確でなければならず、消費者保護の観点から不動産業者は査定に関する説明責任を負います。
不動産取引を行うには、宅地建物取引士資格を持つ者のみが法的に認められています。違法な誇大広告や虚偽の説明は厳禁です。トラブルが発生した場合は、指定流通機構や不動産公正取引協議会に相談することができます。不動産業者も査定に関する情報を適切に管理し、守秘義務を遵守しなければなりません。
法律に基づいた適正な査定は消費者の安心と信頼を守るために欠かせないものです。
不動産査定を依頼する会社選びのポイント
不動産査定を依頼する会社を選ぶ際に重要なポイントは以下のとおりです。
- 実績と評判で選ぶ
- 地域に精通しているかで選ぶ
- 対応が早いかで選ぶ
- 費用の透明性で選ぶ
不明瞭な費用が後から発生することを防ぐためにも、事前に費用についてしっかり確認することが重要です。
実績と評判で選ぶ
不動産査定を依頼する際は、会社の実績と評判を重視することが重要です。実績が豊富な会社を選ぶことで、高い精度の査定が期待できます。査定の信頼性は過去の取引実績に裏打ちされているため、取引実績が多く公開されている会社を選ぶと安心です。
具体的には、以下の点に注意してください。
- 口コミや評判をチェックし、信頼できる会社を選定
- 地域での評判が良い会社を優先的に検討
- 長期間にわたり安定した業績を持つ会社を選ぶ
- 顧客満足度が高い会社を選ぶと安心
- 他の利用者からの推薦や紹介がある会社を考慮
- 受賞歴や業界での認定を持つ会社を選ぶと信頼性が高い
- 不動産関連の専門資格を持つスタッフが在籍しているか確認
上記の要素を総合的に考慮することで、実績と評判の高い不動産会社を選べます。実績が多い会社は交渉力も強い可能性が高く、安心して査定を依頼することができるでしょう。
地域に精通しているかで選ぶ
地域に精通しているかどうかで不動産会社を選ぶことは非常に重要です。地域の特性や市場動向を深く理解している会社は、より正確な査定ができるからです。
地域の不動産市場に詳しい会社は、近隣の物件の取引事例を多数把握しています。地元の価格動向を理解しているため、適切な価格設定が可能です。売却までの期間を短縮することにもつながります。
地域のコミュニティや行政情報に精通していることも大きなメリット。将来的な開発計画やインフラの変動に関する情報を持っていると、新しい買い手に対して魅力的なポイントをアピールできます。
地元のネットワークを活用して迅速に情報収集ができる点も見逃せません。地域特有の需要や供給のバランスに合わせた戦略を立てることができるため、査定額に対する信頼性が高まります。
地域に精通している不動産会社を選ぶことで、より正確で迅速な売却が期待できます。地元の口コミや評価も参考にしながら、最適な会社を見つけることが成功の鍵です。
対応が早いかで選ぶ
対応が早い会社を選ぶことは、信頼性の高さを示す重要なポイントです。迅速に対応してくれることで、スムーズなコミュニケーションができ、ストレスを軽減できます。
具体的には、以下の対応ができる会社が挙げられます。
- 問い合わせへの返信が早い
- 見積もりや査定結果を迅速に提供
- 急な変更や要望にも柔軟に対応
- クレーム対応が迅速
上記の対応ができる会社に依頼することで、安心して不動産取引を進めることができます。
費用の透明性で選ぶ
不動産査定を依頼する際、費用の透明性は非常に重要です。予期しない追加費用を防ぎ、安心して取引を進められるからです。
具体的には、以下のポイントを確認しましょう。
- 明確な料金体系
- 無料査定の提供
- 隠れた費用や追加料金の確認
- 詳細な見積書の提供
- 価格の変更がないか契約書で保障
以上のポイントを満たしている会社であれば、費用の透明性が高く、信頼できると言えます。費用の透明性を確認することで、安心して不動産査定を依頼することができます。
不動産査定時のポイント
不動産査定時に考慮すべきポイントは以下のとおりです。
- 査定前に準備すること
- 売却理由の伝え方
- 査定結果に納得がいかない場合の対処法
上記を理解したうえで査定を受けることで、正確な査定額を得られます。
査定前に準備すること
査定前に準備することは、不動産の正確な査定を受けるために非常に重要です。以下の必要書類を揃えましょう。
- 必要書類(登記簿謄本、公図、権利証明書)
- 境界確定書、測量図
- 建築確認済証、検査済証
- リフォーム履歴、修繕履歴
- 固定資産税納税通知書
周辺環境やアクセス情報についても把握しておくと、査定士に物件の魅力をアピールする際に役立ちます。
同一エリアの過去の売買実績の調査も行いましょう。現実的な市場価格を知ることができ、査定額に納得しやすくなります。現地の清掃と整理整頓を行い、写真撮影用の準備をしておくことも大切です。綺麗な状態で査定を受けることで、より高い評価を得ることができます。
売却理由の伝え方
売却理由を伝える際には、真実を基本としつつ、過度にネガティブな理由は避けることが大切です。買い手に不安を感じさせず、安心感を与えるためです。
具体的には、家族や仕事の都合などのポジティブな理由を挙げると良いでしょう。例えば「仕事の転勤が決まり、引っ越すことになったため」や「家族が増えたので広い家に移りたい」などがあります。
不動産の魅力を強調することも重要です。以下のようなポイントを伝えると、買い手にとってのメリットが明確になります。
- 駅から近く、通勤が便利
- 周辺には公園や学校がある
- 子育てに最適な環境
市場の変動を理由にする場合もありますが、具体的な説明が求められます。「現在の市場価格が高いため、売却のタイミングとして最適と判断しました」といった形で理由を伝えると、納得感が高まります。
売却理由を簡潔に伝えることも大切です。長々と説明するのではなく、要点を押さえた短い説明を心がけましょう。買い手にとっても理解しやすくなります。
売却理由を伝える際には、真実を基にしつつポジティブな理由を選び、不動産の魅力を強調しながら簡潔に伝えることが大切です。買い手に安心感を与え、スムーズな取引が期待できます。
査定結果に納得がいかない場合の対処法
査定結果に納得がいかない場合は、理由を明確にしましょう。納得できない理由が明確であれば、次のステップに進みやすくなります。
納得できない理由が明確になったら、以下の対処法を取ることをおすすめします。
- 複数の不動産会社に再査定を依頼する
- 複数の査定結果を比較することで、適正な価格を把握できます。特に査定価格が極端に異なる場合は、理由を詳しく確認することが重要です。
- 査定の根拠を詳細に説明してもらう
- 不動産会社に根拠を聞くことで、納得できるかどうかを判断できます。不明点や疑問点があれば、すぐに質問しましょう。
- 市場の相場と比較する
- 周辺地域の市場価格や類似物件の取引価格を調査し、査定額と比較することで、適正価格かどうかを確認できます。不動産の状態や修繕が必要な箇所を再確認することも忘れずに行いましょう。
- 不動産鑑定士に正式な鑑定を依頼する
- 専門家の意見を参考にすることで、より正確な評価を得ることができます。
- 査定結果に納得できない点を具体的に不動産会社に伝える
- 納得できない理由を明確に伝えることで、再査定や見直しの可能性が高まります。
- ネット上の査定ツールを活用する
- 多くの不動産サイトでは、簡単な入力で査定額を確認できるツールが提供されています。ツールを利用することで、初期の参考価格を知ることが可能です。
まとめ
不動産査定は、売却や購入の際に適正な価格を知るために欠かせないものです。査定方法は、以下の中からニーズに応じて選択できます。
- オンライン査定:査定の結果は早いが、価格は目安とする
- 訪問査定:実際に物件を確認し、正確な査定が出せる
- 一括査定サービス:一度に複数の見積もりを比較できる
査定依頼から結果を受け取るまでの流れを理解し、依頼する前の準備が大切です。査定価格の計算方法には取引事例比較法、原価法、収益還元法があります。
査定は無料で依頼できますが、有効期限が3か月であることに注意しましょう。不動産査定の基本を押さえることは、売却や購入時に重要な役割を果たします。