不動産売却時にかかる仲介手数料が高額で困っていませんか。実は仲介手数料の上限は法律により決まっており、上限以下であれば交渉次第で値引きに応じてもらえる可能性があります。売却益の損失を防ぐには、手数料の削減が重要です。
この記事では、不動産売却時にかかる手数料や計算方法、手数料を安くする方法について解説します。記事を読むと手数料についての知識が深まり、不動産売却時にかかる手数料を賢く抑えられます。
不動産の売却にかかる手数料
不動産売却時にかかる手数料は以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登記費用
- その他の費用
仲介手数料
仲介手数料は不動産売却時に発生する費用の1つです。仲介手数料は不動産会社に支払われ、売却活動に関連するさまざまなサービスをカバーするために使用されます。
仲介手数料の概要は以下のとおりです。
- 不動産売却時に不動産会社に支払う手数料
- 売却価格に応じて算出
- 支払いのタイミングは売買契約の成立時や物件引渡し時
- 地域や不動産会社で異なり売却価格の数%が相場
印紙税
印紙税は売買契約書や重要な文書作成時に必要な税金です。売買契約書の作成時は適切な金額の印紙を購入し、文書に貼付します。
印紙税は文書の種類や取引の金額に応じて異なる税率が適用されます。印紙税の概要は以下のとおりです。
- 売買契約書など特定の文書に貼付する印紙の購入時に納付する税
- 税率は文書の内容や金額により決定
- 売買契約書の印紙は契約金額により決定
登記費用
登記費用は不動産売却時に発生する重要な費用の1つです。登記費用には所有権移転の登記申請に必要な手数料や、手続きを代行する司法書士への報酬が含まれます。
登記費用の概要は以下のとおりです。
- 不動産の所有権移転登記に必要な費用
- 土地または建物の売買時に発生
- 平均的な登記費用は数万円から数十万円の範囲
その他の費用
不動産売却時は仲介手数料や登記費用以外に、その他の費用が発生します。その他の費用には物件の状態や売却過程で発生する経費が含まれます。
その他の費用の概要は以下のとおりです。
- 土地の正確な境界を測定するための測量費用
- 物件引渡し前の清掃費用
- 既存建物の解体費用
- ローン残債がある場合に銀行へ支払う手数料
- 税理士や不動産コンサルタントへの報酬
- 物件宣伝の広告費用
仲介手数料の計算方法
仲介手数料の計算方法は、売却物件の価格により異なります。手数料の上限は法律で定められており、物件の価格帯により異なるパーセンテージで適用されるのが一般的です。
仲介手数料の計算式
不動産売却の際に不動産会社へ支払う仲介手数料の計算式は、宅地建物取引業法で定められています。売却価格によるパーセント率と計算式は以下のとおりです。
売却価格 | 仲介手数料の計算式 |
200万円以下 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
仲介手数料の上限
仲介手数料の上限は宅建業法第46条により定められており、不動産取引で上限を超える請求は認められません。仲介手数料の上限は消費者保護のために設定されています。
仲介手数料の上限は以下のとおりです。
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の部分 | 売却価格×5.5% |
200万円超~400万円以下の部分 | 売却価格×4.4% |
400万円超の部分 | 売却価格×3.3% |
以下の費用がかかった場合、仲介手数料の上限を超えて請求される可能性があります。
- 遠方物件の売却時にかかる物件管理費や交通費
- 遠方物件の購入希望者と交渉する際にかかる出張費や交通費
この他に特例として、物件価格が800万円以下の「低廉(ていれん)な空家等」の宅地建物の場合にも仲介手数料が原則を超えて請求されることがあります。媒介契約時に報酬額を確認しておきましょう。
2024年7月1日より「低廉な空家等」の物件価格が400万円から800万円に引上げられました。最大で30万円×1.1倍(税込み)の仲介手数料となります。
不動産売却の手数料を安くする方法
不動産売却時の手数料は、売却コストに大きな影響を与えます。不動産売却の手数料を安くする以下の方法を理解し、コスト削減を目指しましょう。
- 不動産会社と仲介手数料の交渉をする
- 登記費用の安い司法書士を選ぶ
- 税金の特例を活用する
不動産会社と仲介手数料の交渉をする
不動産売却時にかかる仲介手数料は、法律で定められた上限内で価格交渉が可能です。複数の不動産会社から見積もりを取り、手数料を比較検討し、交渉を行います。
交渉前に売却予定の物件価値や市場の動向を理解しておくことも大切です。仲介手数料の交渉方法を以下にまとめました。
- 媒介契約を結ぶ前に交渉する
- 媒介契約を結ぶ前に複数の不動産会社と面談し、仲介手数料の値引き交渉を行います。専属専任媒介契約か専任媒介契約の締結を条件に交渉すると、仲介手数料の値引きに応じてくれる可能性が高まります。
- 他社の査定書を提示する
- 他の不動産会社の査定書を持参して交渉すると有効です。根拠がある資料で査定額の違いを提示すると、仲介手数料の値引きを検討してもらえます。
- 成功報酬型仲介を利用する
- 成功報酬型仲介手数料は、不動産の売却が成功した場合にのみ支払う仲介手数料です。売却が成功しなければ手数料が発生しないため、コストを抑えられます。
交渉時は無理な値下げを要求せず、折り合いを付けることも大切です。仲介手数料の交渉はあくまでも任意のため、強い要求は条件の悪化や売買契約成立の不可につながる可能性があります。
不動産業者としては報酬が下がるほど、広告宣伝や営業活動などできることの幅が制限されます。仲介手数料に対してどんな活動をしてくれるか確認することも重要です。
登記費用の安い司法書士を選ぶ
登記費用の安い司法書士を選ぶことは、不動産売却時の総コストを抑えるため非常に重要です。登記費用の安い司法書士を選ぶ方法を以下にまとめました。
- 複数の司法書士から見積もりを取る
- 司法書士の料金は固定ではなく、事務所により異なります。料金やサービス内容、信頼性を比較検討するため、複数の司法書士から見積もりを取りましょう。
- インターネットで司法書士の評判や口コミを比較する
- インターネット上には司法書士の費用を比較検討できるサービスがあります。サービスを活用し、司法書士の評判や口コミなどを比較検討することが大切です。良い評価が多く、料金が安い司法書士事務所を選ぶと、手数料の削減につながります。
- キャンペーンや割引サービスを利用する
- 初回相談無料キャンペーンや、割引サービスを提供している司法書士に依頼するのも一案です。無料相談で司法書士の対応やサービス内容の確認ができます。
税金の特例を活用する
不動産売却時の手数料を安くするためには、税金の特例を活用することが有効です。特例を活用すると売却益にかかる税金が軽減されます。不動産売却時に活用できる代表的な税金の特例を以下にまとめました。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 居住用財産の3,000万円特別控除は、個人が自己の居住用財産を売却した際に得た譲渡所得に対して適用される特別な控除です。売却時は所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができます。
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 10年以上所有するマイホーム(居住用財産)を売却した場合、譲渡所得が6,000万円以下において軽減税率の適用を受けられます。居住用財産の3,000万円特別控除との併用が可能です。マイホームの取得資金の一部または全部を、住宅ローンで借り入れていた場合に活用すると有利な制度です。
- 小規模宅地等の特例
- 相続税や贈与税の課税対象となる宅地のうち、土地価格の80%を減額できます。被相続人が住んでいた家や、被相続人の親族が住んでいた家などが対象です。小規模宅地等の特例を受けるには、相続税の申告期限内に申請する必要があります。
上記3つの特例を活用するには適用要件を満たす必要があるため、詳細は国税庁の公式サイトで確認してください。
>>国税庁(外部サイト)
不動産売却で気をつけること
不動産売却を成功させるためには、注意すべきポイントがあります。売却手数料の支払いタイミングや、売買契約キャンセル時のリスクなどを把握し、売却計画を立てましょう。
手数料の支払いタイミング
手数料の支払いは、一般的に以下2つのタイミングで行われます。
- 売買契約締結時
- 引き渡し時
手数料の支払いタイミングは売買契約書や重要事項説明書に記載されています。費用により支払いタイミングが異なるため、費用の準備に注意が必要です。主な手数料の支払いタイミングは以下のとおりです。
費用 | 支払いタイミング | 支払い方法 |
仲介手数料 | 売買契約締結時 | 現金または銀行振込 |
印紙税 | 売買契約締結時 | 売買契約書に貼付 |
不動産登記簿謄本取得費用 | 売買契約締結時 | 現金または銀行振込 |
住宅ローン抵当権抹消費用 | 売買契約締結時 | 現金または銀行振込 |
固定資産税・都市計画税 | 決済時 | 現金または銀行振込 |
不動産取得税 | 決済時 | 現金または銀行振込 |
売買契約キャンセル時の違約金
売買契約をキャンセルする際は、売買契約書に定められた違約金が発生します。違約金の金額は、契約時に双方が合意した内容に基づいて決定します。売買契約キャンセル時の違約金は以下のとおりです。
キャンセル理由 | 違約金の目安 | 備考 |
買主都合 | 売却代金の10~20% | 違約金は売買契約書に記載されている割合 |
売主都合 | 手付金の返還+同額の賠償金 | 賠償金は売買契約書に記載されている割合 |
双方合意 | 手付金の返還 | 返還は売買契約書に基づき協議 |
物件の重大な瑕疵 | 違約金なし | 売買契約の解除 |
金融機関の融資不承認 | 手付金の返還 | 売買契約書に融資特例が記載されている場合に該当 |
キャンセルの理由やタイミングにより、違約金が発生しない場合もあります。売買契約書と重要事項説明書の記載事項を確認しましょう。
売却後のよくあるトラブル
不動産売却後は、さまざまなトラブルの発生が考えられます。主に売主と買主の認識相違が原因で生じる場合が多く、法的な知識が必要になる可能性があります。売却後によくあるトラブルは以下のとおりです。
- 売買契約の不履行による違約金の発生
- 隠れた欠陥が発覚した際の責任問題
- 立ち退き拒否や入居者との問題
- クリーニングや修繕の不備によるクレーム
- 誤った物件情報の提供による訴訟リスク
- 売却代金の精算問題や遅延
- 隣地との境界線問題
売却後のトラブルを防ぐには、売却前に物件の状態を正確に把握し、売買契約書に具体的な条項を明記することが重要です。法的な問題が発生した場合に備え、信頼できる専門家を探しておくと、安心して不動産売却ができます。
不動産売却の手数料に関するよくある質問
不動産売却の手数料に関する、よくある質問にお答えします。
仲介手数料はなぜ必要なのか?
仲介手数料は、複雑な手続きが多い不動産取引をスムーズに進行させるための費用です。仲介手数料が必要な理由は以下のとおりです。
- 不動産取引の専門知識と経験を提供するため
- 売買契約の仲介や交渉、進行管理を行うため
- トラブル発生時の対応や法的サポートを提供するため
- 市場価格の評価を行い、適切な価格設定をサポートするため
- 広告や物件情報の公開、見学会の実施など販売促進活動を行うため
仲介手数料を支払うと、専門家による全面的なサポートを受けられ、安心して不動産取引を進められます。仲介手数料は不動産売却時に必要な費用と言えます。
仲介手数料を払わずに不動産売却はできるのか?
仲介手数料を支払わずに不動産を売却することは可能です。仲介手数料不要で不動産売却ができる方法を以下にまとめました。
- 売主が直接売却する
- 売主が物件を直接売却する方法です。知人や親戚などに直接声をかけて買主を見つけた場合、仲介業者を介さないため、手数料が節約できます。しかし、万一トラブルが発生した場合、自分で対応する必要があります。
- 仲介手数料無料の不動産会社を利用する
- 仲介手数料無料のサービスを行っている不動産会社を利用する方法です。トラブル防止のため、サービス内容や査定価格の算出方法などを十分確認する必要があります。
- 不動産買取業者に売却する
- 不動産会社が買主になり、売主から不動産を買い取るため、仲介手数料がかかりません。手数料がかからない利点がある一方、市場価格より低い価格で買い取られるケースが多くあります。
不動産売却は大きな金額が動く取引で、法的な手続きや契約の交渉には専門的な知識が必要です。仲介手数料を節約した場合に発生するリスクを考慮し、不動産売却を検討することが重要です。
まとめ
不動産売却時には仲介手数料や印紙税、登記費用など、さまざまな手数料が発生します。仲介手数料は売却価格に基づき計算され、法律で定められた上限があります。
不動産売却手数料を安くする方法は以下のとおりです。
- 不動産会社との値引き交渉
- 登記費用が安い司法書士の選定
- 税法の特例の活用
上記の方法を組み合わせると、不動産売却時にかかる手数料を節約できます。
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