不動産を売る際に、どの媒介契約を選べばいいのか迷っていませんか?
専属専任媒介契約は他の契約と比べ、売主と不動産会社の関係を強化しやすい契約方法です。この記事では、専属専任媒介契約の基本やメリット・デメリットを解説し、どのような場合におすすめかを紹介します。
専属専任媒介契約なら、売却の手間を軽減できます。不動産会社が積極的に物件の売却に取り組むため、売りにくい物件でも有利です。
この記事を読めば、売却時にどの媒介契約を選ぶべきか判断しやすくなります。
不動産業に従事して10年、宅地建物取引士である筆者が解説します。
専属専任媒介契約とは
専属専任媒介契約は、売主と不動産会社が緊密に連携する契約方法です。集中した売却活動を行う場合に多く選択されています。
» 媒介契約とは?各契約のメリットとデメリット
専属専任媒介契約の定義
専属専任媒介契約には、以下の特徴があります。
- 契約期間中の不動産会社以外に売却を依頼できない
- 売主自身による買主探しも制限される
- 不動産会社は積極的な売却活動が義務付けられる
- 売主は定期的に活動報告を受ける
- 一般的に契約の解除要件が設けられる
専属媒介契約では、効果的な売却活動に専念できます。
» 不動産売却成功への近道!
専属専任媒介契約と他の媒介契約の違い
不動産売買の契約方法には、以下の3種類があります。
- 専属専任媒介契約
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
大きな違いは、売主側が売却活動を委ねる不動産会社の数です。専属専任媒介契約では、売却したい物件を一つの不動産会社のみに委ねます。一般媒介契約や専任媒介契約では、複数の不動産会社に同時に売却を依頼することが可能です。
媒介契約の種類による詳しい違いは、以下の表を参考にしてください。
項目 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
他社と同時契約 | 不可 | 一定期間は不可 | 可能 |
自分で買主を見つける | 不可 | 可能(要通知) | 可能(要通知) |
不動産会社の活動報告義務 | 1週間に1回以上の報告 | 2週間に1回以上の報告 | なし |
レインズへの登録 | 3か月が限度 | 3か月が限度 | 規定なし |
他社での成約 | 違約金が請求される | 違約金が請求される | 履行費用を請求される場合がある |
自分で買主と成約 | 違約金が請求される | 履行費用を請求される場合がある | 履行費用を請求される場合がある |
契約解除のペナルティ | 履行費用を請求される場合がある | 履行費用を請求される場合がある | なし |
契約の有効期限 | 3か月が限度 | 3か月が限度 | 規定なし |
レインズ(REINS)とは
売却物件の情報が登録されている不動産会社専用のネットワークシステムのこと。最新の不動産売買状況や適正な売却価格の把握などに活用する。個人では利用できず、不動産会社と契約が必要。
専属専任媒介契約では、不動産会社に買主の紹介や広告活動を専属で任せるため、進捗状況の報告義務や活動義務が他の契約より厳格です。売却状況を具体的に把握できるメリットがある一方で、売却成果は契約した不動産会社の力量に左右されます。
売却戦略や物件の特性、不動産会社との信頼関係を総合的に考慮し、適切な媒介契約を選ぶことが大切です。
専属専任媒介契約の解除条件
契約途中で専属専任媒介契約を解約するには、解除要件を満たす必要があります。スムーズに解除が行われる例は、以下のとおりです。
- 契約期間満了による自動解除
- 売主と不動産会社の合意による契約解除
- 契約違反があった場合の解除権の発生
- 物件の売却が成立した際の解除
専属専任媒介契約は拘束力の強い契約のため、最大3か月が有効期限と定められています。依頼者が申し込めば、契約期間の更新が可能です。
以下の場合でも、契約解除に至る可能性があります。
- 売主の重大な事情変更がある
- 法律や契約条項に基づく特定の解除事由の発生した
- 不動産会社が約束したサービスを提供できない
- 国民生活センターから調停・勧告がある
- 不動産会社の営業免許が取消・失効した
期間途中での契約解除は、違約金の発生につながる可能性があります。媒介契約を行う前に契約内容をよく読み、解除条件を確認することが大切です。
専属専任媒介契約のメリット
専属専任媒介契約には、以下のメリットがあります。
- 不動産会社が優先的に物件を取り扱う
- 定期的に売却活動の報告を受けられる
不動産会社が優先的に物件を取り扱う
専属専任媒介契約では、不動産会社が優先的に物件を取り扱ってくれます。具体的なメリットは、以下のとおりです。
- 積極的な広告や販売促進活動を展開してくれる
- 専任スタッフによる手厚いサポートが期待できる
- 売却に時間と労力をかけてもらえる
- 早期売却の可能性が高まる
- 交渉や手続きがスムーズに進む
- 売主の負担が軽減される
専属専任媒介契約によって、不動産会社は該当物件の売却に全力を尽くします。1社専任なので、売主のニーズに沿って具体的な販売計画やマーケティング戦略を立ててもらうことが可能です。
一方で一般媒介契約は仲介手数料が入らない可能性があるため、不動産会社としては広告費や労力をかけづらいのが実情です・・・
定期的に売却活動の報告を受けられる
専属専任媒介契約を結ぶと、不動産会社から定期的に売却活動の進捗状況を報告してもらえます。市場動向や反響を詳細に把握できるため、売却戦略の見直しや改善点の特定に便利です。
報告の頻度や方法は、契約時に不動産会社と取り決めます。不動産会社の活動を把握することも簡単です。
売却活動の透明性も高まり、売主と不動産会社の信頼関係の構築につながります。専属専任媒介契約は売却に専念しやすい体制を作る契約方法です。
定期的な進捗報告によって、売主は売却活動の状況を把握できます。
専属専任媒介契約のデメリット
専属専任媒介契約のデメリットは、以下のとおりです。
- 他の不動産会社との契約ができない
- 自分で買主を探せない
契約を結ぶ際にはデメリットを理解し、売却計画に合った選択をすることが大切です。
他の不動産会社との契約ができない
専属専任媒介契約の期間中に売却を依頼できるのは、一社の不動産会社のみです。
独占的な契約のため、不動産会社の営業努力や売却戦略次第で物件の売却成否が決まります。不動産会社が積極的な活動や戦略を立てない場合、売却までに時間がかかる可能性があります。依頼した不動産会社の売却活動が不十分でも、契約期間中は他社に変更できません。
契約を締結する際には、不動産会社の実績や信頼性を慎重に吟味しましょう。
» 不動産屋の選び方完全ガイド
自分で買主を探せない
自分で買主を探せない点も、専属専任媒介契約を結ぶデメリットの一つです。専属専任媒介契約は売却方法やタイミングなどの自由度が低く、不動産会社の提案に従う必要があります。
不動産会社を通さずに買主を見つけることは契約違反につながる恐れがあります。知人や自身のネットワークを生かした物件の売却ができません。仮に自分で買主を見つけたとしても、取引を進める際は必ず契約中の不動産会社を介す必要があります。
自由に買主を探せないため、売却のチャンスを狭めてしまう恐れがあります。
専属専任媒介契約をおすすめするケース
専属専任媒介契約をおすすめするケースは、以下のとおりです。
- 売却に手間をかけたくない
- 売りにくい条件の物件を売却したい
売却に手間をかけたくない
売却に手間をかけたくない方には、専属専任媒介契約が便利です。不動産会社に売却活動を全面的に委託できます。
専属専任媒介契約なら、売却にかかる手間を大幅に削減可能です。不動産会社が交渉や書類作成などの面倒な作業を代行してくれるため、専門知識がない方でも、安心して売却を進められます。
専属専任媒介契約は、生活に影響なく不動産売却を進めたい方にもおすすめです。
売りにくい条件の物件を売却したい
売りにくい条件の物件でも、専属専任媒介契約を結ぶと有利に売却を進められる可能性が高まります。立地や状態が原因で買い手が見つからない物件では、不動産会社のネットワークや専門知識を活用するのがおすすめです。
不動産会社は市場分析や価格戦略を細かく行い、物件の魅力を最大限に引き出す提案をしてくれます。売れ残るリスクを減らすため、効果的なプロモーション策を打つことも可能です。
専属専任媒介契約は、競合物件が多く売却が難しい状況や、特定の不動産会社を信頼している場合にもおすすめです。相場より高価での売却や専門的なサポートも求められます。
専属専任媒介契約の注意点
専属専任媒介契約を結ぶ際には、以下の注意点を把握しておく必要があります。
- 不動産会社選びが重要
- 囲い込みのリスク
不動産会社選びが重要
不動産会社選びは物件売却の成功に直結するため、非常に大切です。不動産会社にはそれぞれ、以下のような強みがあります。
- 広いネットワークがある
- 特定地域に強い
- 特定の物件タイプに特化している
適切な会社に依頼できれば、売却できる確率が高まります。不動産会社を選ぶポイントは、以下のとおりです。
- 信頼性や実績
- 過去の成果
- 顧客レビュー
会社選びを間違えると、売却チャンスを逃す可能性があります。複数の会社を比較し、サービス内容や評判をじっくり見極めることが大切です。一括査定サイトなどを使えば、効率的に不動産会社を比較できます。
専属専任媒介契約は一つの不動産会社にすべてを任せる契約のため、慎重に選択すべきです。選んだ不動産会社の成果が芳しくなくても、簡単に他社へ変更できません。
囲い込みのリスク
専属専任媒介契約には、物件の囲い込みリスクがあります。囲い込みとは、不動産会社が物件情報を他社やポータルサイトに流さず、自社で独占的に販売活動を行うことです。
物件の囲い込みによるリスクには、以下の例があります。
- 一般市場に出ず買主が見つかりにくい
- 十分な販売活動をしてもらえない
- 希望価格よりも低い価格で売却される
- 高額な仲介手数料を取られる
専属専任媒介契約のリスクを避けるためにも、不動産会社選びは非常に重要です。
» 無料でできる不動産査定
まとめ
専属専任媒介契約は、不動産売却を一つの不動産会社に委託する契約方法です。以下のメリットがあります。
- 集中して売却活動をしてもらえる
- 定期的な売却状況の報告を受けられる
- 売却に時間と労力をかけてもらえる
- 早期売却の可能性が高まる
- 交渉や手続きがスムーズに進む
- 売主の負担が軽減される
手間をかけずに売却を進めたい方や、特殊な条件の物件を扱う場合におすすめです。
専属専任媒介契約を結ぶと、他の不動産会社との契約や個人での買主探しができません。不動産会社選びは慎重に行い、物件が囲い込まれことを防ぎましょう。
適切な不動産会社を選べば、専属専任媒介契約は効率的に売却活動を行う有効的な手段だと言えます。
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